奇襲を食らったカブトムシ軍は、不意をつかれて遠くに飛ばされる者や、ひっくりかえって
しまう者もいた。 しまった、とハナビたちは思った。クワクワ軍団。騙し討ちをするなんて
卑怯な奴らだ。しかし見事な連携技だった。しっかりと綿密に作戦を計画していたようだった。
不意をつかれたカブトムシ軍は後手後手に回り、オオクワガタの鋭く、そして強力なアゴ
に挟まれていた。カブトムシ軍はみんな身動きが取れなくなり、取り返しのつかない状況に陥っ
ていた。 こんな状態で自分一人がどう頑張ったところで、全員を助けることは出来ない。
ハナビは己の無力さに唇を噛み締めた。 ハナビが呆然と立ち尽くしていると、すごいスピー
ドでクワードが飛んできた。「隙ありだぜ。」そう言ったのも束の間、ハナビは他のカブトム
シたちと同様に、アゴに挟まれてしまった。「くっくっく。カブトムシのリーダーは情けない
ね。こんなに弱いやつは初めてだよ。」 ハナビは必死になってもがくが、クワードの力強い
アゴから逃れることは出来なかった。もうハナビはなすすべもなく、半ば諦めかけていた。そ
の時だった。「助けてー。」むこうでビースケやビーコの声が聞こえる。そうだ。今自分が諦
めたらビースケやビーコをはじめとするカブトムシの仲間たちを誰が助けるんだ。自分はリー
ダーじゃないのか。ハナビじゃないのか。そんな無責任なことをしたら絶対にいけない。「..
.。俺はハナビだ...。」「ん?なんだ?」ハナビのあまりに小さい呟きに、つい少し力を緩め
て耳を傾けるクワード。ハナビはその僅かな隙を逃さなかった。「俺はハナビだぁぁぁ!」ハ
ナビはけたたましく叫ぶと、自分の角をクワードの体の下に入れ、思い切り突き飛ばした。「
うわぁぁぁ」ハナビの怪力によって、クワードは遠くまで突き飛ばされる。「な、なんだと?」
それをみていた他のクワクワ軍団のメンバーも呆気にとられていた。 それを逃さないカブ
トムシたちは、ハナビのマネをして自分の拘束を解き、相手を突き飛ばしたのだ。