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椿とすみれ

6

 翌朝、渉は一限のため満員電車に揺られていた。みんなして真面目にこんな混雑した電車に
乗って職場に行き特別やりたくもない仕事を夜まで全うする。そんな人たちを見て、渉は嫌気
がさしていた。それは渉自身が世間知らずであるが故の考えだとは気づかずに。 満員電車の
中ですみれの姿を探したが、いかんせん人が多すぎて見つけ出すことはできなかった。 学校
に到着すると、また例のイケてない友達が、チェックシャツをズボンにインしながら挨拶をし
てきた。「何ボケーっとしてんだよ!」友達に気づいた渉は深く溜息をついた。すみれが一人
になったタイミングで話しかけたいのに、こいつがいては台無しではないか。仕方ない、渉は、
放課後までタイミングを待つことにした。 放課後まで話しかけるタイミングを待ち続けた
渉はかなり苛立っていた。貧乏ゆすりをしながら煙草を吸い、頭を掻きむしっていると、友達
と別れたすみれの姿が見えた。「こ、こないだはどうも。」渉は、キャバクラで話した時とは
うって変わった挙動不審な様子で、話しかけた。
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