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約束の場所へ

クリスマス

 重徳が脇目もふらずただ勉強に打ち込んでいるうちに街にはイルミネーションの季節が訪れ
ていた。今年はサンタクロースはうちにやってくるねだろうか。 重徳にとってはそんなイベ
ントのことなどどうでもよかった。 高校三年生のこの時期になると、学校の授業も殆ど無い
ので、毎日図書館に足を運び、机にかじりついていた。 クリスマスなどどうでもいいと思っ
ていた重徳だったが、図書館に行くために街へ出るとなんだか少し寂しい気持ちになる。もし
も自分たちが受験生ではなかったら、目に映るカップルのように桜と一緒に幸せな時間をすご
せたのだろうか。そんな事を考えながら重徳は、かじかむ手でハンドルを握り、いつもの道を
通って図書館まで自転車を走らすのであった。 春には桜が満開だったこの桜並木が、今では
すっかりクリスマスのイルミネーションの装飾が施されている。自転車を漕ぐ重徳の頰を冷た
い空気が伝う。 やがて重徳は桜と約束を交わした一番大きな桜の木の前まで来た。思わず重
徳は自転車を止め、木を見上げる。そこで、桜との思い出を振り返り、そして、約束の事をしっ
かりと自分に再認識させた。
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